M. バタフライ

M.バタフライ

M.バタフライ

ジャコモ・プッチーニのオペラ『蝶々夫人』では、蝶々夫人が海軍士官のピンカートンに騙された挙句、命を絶つのだけど、『M.バタフライ』では前者とほぼ逆の筋立てになっていて、京劇俳優ソン・リリンに騙された外交官のルネ・ガリマールが自害する。前者と趣を異にしているのは筋立てのみならず、女性として振舞っていたソンが実は男性だったという点にあって、雑駁に言うと、東洋人女性/男性ソンが西洋人ガリマールの抑圧言説を逆手にとる形で彼を破滅させるという、オリエンタリズム批判になっていること。このあたりの議論は、『現代思想のパフォーマンス (光文社新書)』のサイードの項で扱われていますので、興味のある方はご覧下さい。ただ、あまりにも当てはまりすぎる感があるのは気のせいか。