自殺クラブ

何も読んでないので昔読んだものを。

ロバート・ルイス・スティーヴンソン『自殺クラブ』。元々この話は『ラージャのダイヤモンド』とともに、New Arabian Nights (1882) 所収の作品。『自殺クラブ』は、「クリーム・パイを持った若い男の話」、「医者とサラトーガ・トランクの話」、「二輪馬車の冒険」のそれぞれ緩やかにつながる三つの短編から成り立っている。

ボヘミアのフロリゼル王子は腹心のジェラルディーン大佐を従え、未知なる世界を体験しようとしばしば変装して都会の雑踏に紛れ込んでいる。こう書くと「バカ殿様」みたいだけどそんなことはなくて、才芸に秀で見識も高く、どの階級の人間からも好意的に捉えられる好人物。そんな王子がひょんなことから自殺クラブへ入会し、そこで行われる殺人事件を目撃、フィクサーのクラブ会長を断罪する。探偵小説の要素もあり、その後の『箱ちがい』(原著1889) で用いられる死体運搬のモチーフもありと興味深い作品。

自殺クラブ (福武文庫)